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一段落ついた事を察したのか、グレンは壁にもたれ掛かったまま口を開いた。
「で、着いて来るらしいぞ。この2人」
「へ?」
シアの目が一瞬点になる。
その瞬間を逃さず、ナギはシアに笑いかけた。
「よろしくね、シアちゃん」
有無を言わさないナギの笑みにシアは「あはは」と苦笑し、依然として目を閉じているルイへと視線を向ける。視線を感じたルイはその瞼を少し開けると、開口した。
「迷惑でなければ」
短く放たれたその言葉にシアはにこりと微笑み、ひとつ頷く。そしてナギへと視線をよこすとベッドから下り、彼に歩み寄った。
「ん?」
笑みを崩さないナギをシアはじっと見つめ、にっこりと笑った。
「それで、笑ってるつもりですか?」
その場の空気がびしりと凍りつく。
シアは冷笑とも言える表情を浮かべながら、目を見開いたまま固まっているナギを見上げた。
「……どういう意味?」
ナギの表情から笑みが消え、その瞼から鋭利に光る琥珀色の瞳が覗いていた。
「分からないんですか? 案外鈍いんですね」
いつの間にかシアからも笑みが消えている。
一瞬にして切迫する空気。
様子を見守っていたグレンの頬に冷たい汗が伝った。
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