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事が全て片付いた後、男は地に座り込んでいたシアに手を差し出す。
「大丈夫か?」
綺麗な金色の双眸。
シアはおずおずとその手を掴んだ。
「う、うん、大丈夫……。ありがとう」
そう礼を言うと、男は淡く口端を上げ微笑む。
「無事で良かった。俺はグレン。宜しく」
グレンと名乗った男は握手を求めるように再びシアに手を差し述べた。
「わっ私はシア! 宜しく……!」
思わずその笑みに見入っていたシアは唐突に現在へ引き戻され、慌ててその手を握る。
グレンはその様子に笑いながら手を放し、一変して真剣な面持ちでシアを見た。
「にしてもお前1人か?」
空気が変わった事を感じ、シアは思わず及び腰になる。
「え、ええ」
そう答えるとグレンは暫く考え込む素振りを見せ、何かを決心したかのように彼女に視線を戻した。
「女1人っていうのも危ねえし……行くあてないなら、一緒に行くか?」
その言葉に、シアの目が点になる。
「…………はい?」
思わずそう聞き返してしまうのも無理はないだろう。少なくともこのような事を言われた事がないシアにとってはこの国が沈没してしまう程の衝撃だった。
何故か、この時ばかりは茶化してくる自然の声が疎わしく感じられた。
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