支えになるモノ

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涙が零れる。それが切なさなのか悲しみなのかさえ分からず泣き続ける。心体共に傷つき過ぎた…    しかし、そこに一雫の光が訪れたのは確かまだ風の冷たい4月だったろうか。 あの日、朝の通勤ラッシュの中を駆け抜けようとしていた瞳に映る人がいた。 時が止まるはずも無いのに今この瞬間、ずっと見ていたいと心の純粋な部分が告げた。         プラットホームから電車が発車する。固まるように動かない体は同じ方向に向いたままだ。       「・・・俺としたことが」後悔に似た焦燥感の中にある心地よさに気付いて顔を上げる。        (いるわけねぇのに、何やってんだ俺は・・・)  うらはらに期待を持たずにはいられなかった。   「乗り遅れましたね。」 優しく胸に入ってくるような透き通った声。頭が錯覚を起こしたと思った。でも、それは違った。目の前にある笑顔を否定する権利は持っていない。     「せっかくですから、お名前を教えてください?」 初めての経験で事実なのか偽りなのかわかんなくなってきた。        「えッ?アッ?えっと・・・宗流 芯治です…あなたは?」         「私は、綾坂 明日夏です。」          高鳴る鼓動が本当のときめきに変わる。彼女はどう感じたのだろうか。情けない男だと思われそうで恐い。「会社遅れちゃったな〰」次の電車では確実に間に合わないのは目に見えてる。(もういいか…)    そう思った時、彼女は俺の手を引いた。      「諦めちゃダメッ!」  そこには天使がいた。紛れもなく綺麗な姿をした天使。一歩一歩踏みしめる度に込み上げる感情が身体を突き動かすようだ。近くにある優しいエネルギーの元で躍動し続ける魂が耐えきれなくなって解放する。  「もういいですッ!」  強く握り締めていた掌が離れていく。       「で、でも会社があるんじゃな」         「好きなんだよ!あなたのことが!その優しさが!全部愛していきたいんだよ!」           少し肌寒い空の下。何かが始まった気がした。
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