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見ていられなかったんだと思う きっと彼女は………尚更。 喧嘩の間に割って入った彼女は…男性客を庇う形で銃弾を受けた 夥しい量の血と、倒れたまま動かない彼女…。 レンちゃんは直ぐに病院へ運ばれ…奇跡的に命は取り留めた けれど……望は……無い……と 心「――――。」 美「………っ!!」 話を終えた美知先生は、泣き顔を隠すように部屋を出た。 みんな…レンが心配で、本当は誰もこの現実を受け入れたくないんだ なのに僕は…僕だけ事実を受け止めようとせず、レンの回復を待つだけ… そんな自分が虚しくて、やっぱり益々腹が立つ。 でもそれ以上に…どうしてこんなに苦しいんだろう。 心「レン。お前、本当に…っ 馬鹿だよ……。」 何もお前がこんな目に合う事ないじゃないか… 僕は今こうしてレンの隣にいるのに、レンの手はこんなにも冷たくて…無機質な身体中に繋がれた管や呼吸器 どうしてこうもすれ違いばかりなんだよ… 叱りたい気持ちと、悲しみに暮れてしまいたい気持ちが錯誤する。 けど、心の奥底じゃわかってた …レンの行動の意味。 不意に浮かぶイアさんの事…。 …争いを酷く嫌っていた。 此の国に住んで、たくさんの人達に支えられて… そんな今のレンだからこそ、国や生まれが原因の争いなんて…黙って見てられなかったんだろ? わかってるよ……でも、やっぱり悔しいじゃないか…っ。 勝手に流れる涙をそのままに、無意識に強く握り締めていた君の小さな手 愛しくて、愛しくて…。 僕はただ――― たった一度の奇跡を願った。
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