第一話

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留学生……敵国から来た捕虜……奴隷 それは全部イコール。 みんなが作る人の輪で、そいつの顔を拝んでやることは出来ない 姿の見えない異国から来た奴隷……だけど、以外だと思ったよ この教室にいるって事は、多分同い年。 やっぱり留学生も僕達と同じ教室で勉強するんだなって、そう思ったから。 今じゃ此の国の至る所で留学生が生活してる噂は聞いてたけど、実際自分の町にやって来たのは初めてだから やっぱり想像してたのは敵国の戦力外になった元兵士ばかりだと思ってた 同い年で捕虜……。 詰られて、罵られて、暴力を受ける。これからこいつは毎日そんな生活を送らなきゃいけないんだ そう思うと、少し不憫な気がした そりゃ、彼の国の人間だって此の国でうまくやってる人はいるよ。 でも留学生は、兵士に敵国から無理矢理連れて来られた立場の人達か……政府の策略にはまってしまって来ざるを得ない人達 言わば囚人。それか、異端者みたいなもの だから、迫害されても、暴力を受けても……家畜のように労働させられても 何も言えないし、きっと誰も助けてくれない 勿論暴力は犯罪だ。でも……そんな立場の人間を、此の国の法は守ってくれない 留学生は……知らない土地で、知らない言葉で傷ついて 虐められて、弄ばれて…そして 死よりつらい地獄を味わう 今僕の目の前に広がる光景が、はっきりとそれを教えてくれた みんなの瞳の奥の殺気 ただ傍観していた僕でさえ恐怖で震えてしまうほどの世界 戦争への恨みが…身近な対照に向けられる。 正に………地獄だった
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