第一話

5/6
前へ
/260ページ
次へ
「ヤメテ...クダサイ..ッ!!」 いつからこの惨劇は繰り広げられていたのか 多分最初はめい一杯抵抗してたんだろうな…。 例えどんな立場だって人間だ 理不尽に殴られれば防御も、反抗もする。 見ず知らずの他人に侮辱されたなら、否定だってする だけどたくさんの他人に囲まれた留学生は、もう自分を守る体力もないほどにぐったりしている。 洗礼……。 きっと、一番最初が一番酷い拷問を受ける 髪の毛を鷲掴みにされ、倒れる身体を蹴られても……もう 「ヤメテ...クダサイ...!!」 それを絞り出す様に呟くしか出来ない ―――――――女の子? ……この子は死んでしまうんじゃないだろうか 現実を知らしめられた僕は、最初にあった好奇心はもう無い 変わりあるのは……混沌 暴力や罵倒を浴びせるクラスメート…… 僕等は仲間で、同じ境遇にある そんな人達が、ただ無気力に横たわる人を罵り、絶望へ叩き落としている 輪廻……憎悪……復讐 どんな言葉も、意味を持たないほどに頼りない それくらい……残酷だった 未だ姿の見えない留学生の……悲痛な嘆きと時々垣間見える鮮血 この人が僕等に何をした? どうして、ここで泣かなくちゃいけないの? どうして……地獄を見なきゃいけないの? わからないよ… もう……やめろよ…… 戦争よりも悲惨なのは…… 僕達の心に巣くう邪心 自分の感情だけを当て付けに、散々他人を陥れていたクラスメート達 満足したのか、まばらに散り始めて…… 憎しみが生んだ輪は消えた 「おい心、先生来るぞ」 心「―――――――。」 変わりに僕が見たのは… 無気力に倒れたまま、死んだように…… ほんの少しとも動かない ……同じ人間 当然、滴る血は僕と…同じ色 ―――勝手に涙が零れた .
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加