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この部屋に舞い込む風は日に日に涼しくなっていく 僕がこの部屋に通い始めて、一つの季節を跨いだ 今日は秋晴れ。 僕はいつもの様に、仕事を終え昼過ぎにここへ来る 中に差す木漏れ日と、小さく揺れるカーテン 心「今日も天気が良くて気持ちいいね」 いつものように君に話し掛ける 今日は過ごしやすい日で、心なしか君もご機嫌に見える 最近は僕自身の心境が変わったのかもしれない 皮肉や憂いばかりだった毎日 でも、美知先生から話を聞いてから、僕もちゃんと現実を見ているつもりだ もちろん…つい考えてしまうことはある 無意味だとわかってしまっても……やっぱり……… ―――僕を庇ってこの世を去ったイアさん イアさんがくれたチャームの中の無邪気に笑うレン―――。 二人は、望まれない運命に虐げられて…それでも自分の人生から目を反らさずにいつも現実を真に受け止めていた そんな二人だから、目の前の悲しみを見過ごす事が出来なかった。 でももしこれがレンの最期なら……僕は世界を恨む。 僕の明日はたくさんの人達が繋いでくれた紛れもない奇跡 そんな幸せを実感すればするほど……こんな悲劇なんて納得できない 出来る事なら変わってあげたい そんな風に思っても僕は…その時果たして喧嘩の仲裁をしただろうか…。 突き付けられた銃に怯む事無く赤の他人を庇う事が出来ただろうか…。 きっと、レンがこんな風になってしまうと知らなかったら、僕にはそんな勇気は無い…。 君の為なら何だって出来る。 今ではそんな自信さえ偽りだったのかとも思ってしまう レンはいつも弱気で、それでも恐怖に立ち向かって行く勇気があった レンはいつも僕を支えてくれたのに… 心「それなのに…僕は君に何もしてあげられない……。」 レ「……それは違うよ、心」 心「―――レン!?」
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