52/54
前へ
/260ページ
次へ
レンの手を握ったまま、僕はどうやら眠ってしまっていたようだった 夢と現の中、僕はまた色々と考え込んでいた そんな中、レンの声にハッと目が覚めた 心「レン…っ。レン!!」 レ「心の声が聞こえました。心はまた自分を責めてました」 心「……レン」 レ「心、お願いがあります」 心「……?」 目が覚めたレンの突然のお願い それは、いつも通っていた海へ行きたいという事だった それから先生に無理を頼んで、点滴や呼吸器を外してもらって、僕達は歩き出した ずっと寝ていたレンの足は覚束なくて ほんの僅かな距離をゆっくり…ゆっくり歩幅を合わせて歩く レ「……ずっと眠っていたのに…なんだか全然そんな気がしません」 心「どうしてかな」 レ「きっと、毎日心が話し掛けてくれたから… 眠ってても、ちゃんと聞こえてました」 心「レン…」 繋いだ手は離さない。 ずっと、ずっとこうしたかった 君の手は温かくて、その温もりに僕はこれほどまでに無いほど感謝した レンは海に着くまでに何度も転びそうになって、その度僕は冷やっとするけど、歩幅を合わせてこうして二人で歩ける事… それは僕が糧にしていた支えそのものだった 浜辺を歩く、波打ち際を辿る様に残す足跡 振り返ると半歩後ろをゆっくり歩くレンの姿 目が合うと恥ずかしそうに少し俯いて…そんな仕草一つ一つが僕は逐一嬉しくて… 懐かしいけど色鮮やかな瞬間。 やっと…やっと君とまたこうして一緒に歩いて、一緒に話す事が出来る ずっと…ずっとこうしたかった ―――そう、これが僕の夢。 僕達が描いた――――夢...
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加