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抱きしめた温もりは本物で――
レンは僕に包まれる事を幸せだと言ってくれた
たった…この瞬間を…
君は待ち焦がれていたと言ってくれて……強く抱きしめ返してくれた
レンは、まるで僕の考えがわかってるように…
もう、自分を責めないで…
僕が生きて帰ってきた。
そしてずっとレンの側にいた。
それだけで幸せだと…
そう言った。
“この世界を…こんな時代を…
人を…自分を…責めないで。
約束して…。
私が心と出会えた事に意味があって、私はこんなにも幸せな気持ちになれた
この気持ちを否定しないで…。
遠く離れてても、お互い毎日想い続けてこれた
それだけで私は幸せ。
だから…約束して。
今度は心が……幸せになって”
僕は頷いた―――。
君と交わした約束を守る事を。
レンがそう言ってくれるから、僕はこれから強くいられると思う。
僕がそう言うと…
――――――君は笑った。
初めて……君の笑顔を見た。
何度も諦めかけたけど…たくさんの人達に助けられながら生き抜いて……
僕はこんなにも幸せな景色を見つける事が出来た。
あんなに生きる意味を見失っていた僕が
こうして僕の側で…君が笑顔を見せてくれた
だからもう―――迷わないよ。
夢から―――醒めた―――。
ふと、僕は顔を起こした。
ここは、小さな港町の診療所の中の小さな部屋…
冷たくなった風が吹いて、静かに揺れる白いカーテン
窓の外には、太陽で光る水平線
目の前には―――眠り続ける君
心電図は機械的に一定の音を鳴らしたまま停まらない
画面内は…窓の外の水平線と繋がったように直線を描く
長い眠りから……君は旅立った
静かに…そっと…
僕にさよならを告げて―――。
最期の別れは…君がくれた笑顔
僕は、君との約束を守るよ。
「―――ありがとう…レン」
太陽の光に包まれて永久の眠りについた君は…
柔らかく、微笑んでいた
“夢から醒めるまでは”
―――――――――――end...
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