序説

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今は動物なんていない動物園 取り残された廃ホテル 片側三車線の大きな道路 石畳の広い歩道 そんな景色が知らせるのは、この町はそれなりの観光地だったって事。 だけど、それは過去の産物 町そのものが栄えた時代から置き去りにされた遺跡みたい なんでそうなったのか… それは、たった三年前にこの町にやって来た僕にでもわかる ―――――戦争 こいつのせいだ。 例えばこの道の中央分離帯。 昔は高い木達が並んでたんだろうな… 今は、空襲に備えて綺麗に伐採されて残るのは切り株だけ 人も道路の広さの割には殆どいないし、車も滅多に通らない。 余計に閑散とした風景が際だつ いつから戦争が始まったかなんて覚えてないよ。 物心ついた頃には、僕達は戦争という恐怖を当たり前に過ごしていた
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