序説

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僕は、地元の町で空襲の被害に遭って、三年前にこの町にやって来た。 その時に、お母さんもお父さんも友達も…… みんな死んだ。 でも、不思議な事にその時あまり泣かなかった これから自分がどう生きればいいかが不安で、それどころじゃ無かったのかもしれない 平和な時代なら、もう少し悲しみに更ける事も出来たんだろうけど……。 それから、政府の人に住む場所や学校を選ばれて、この町に来たんだ でも、身寄りの無い孤児を養う余裕も優しさも、此の国には無い。 僕達は政府に生かされてる だから規約通り、高校を卒業したら届く出兵礼状は絶対だ……。 僕は、卑屈なんだ。 政府や()の国や戦争中の()の国も、大嫌いだ だから、こんな荒んだ世界なんて、死んでも構わない 出兵して……死ぬ事も怖くない 守る物なんて何も無いし、大切な物も全部…… 戦争で亡くしたから。 希望も、夢も、親も友達も… 一瞬のうちに焼かれて…呑み込まれた わかってる。 つらいのは僕だけじゃないよ だから、さっきみたいに軍隊の駐屯地に侵入して殺されかけるようなバカな事をする 贅沢ばかりする政府の人達に悪戯したくなる。 自分の命の大切さが…… 時々わからなくなる
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