序説

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狭い部屋に帰り着いて、今日も一日を終える。 考える事は、軍人と店長に殴られた傷が痛いって事と 雅と話してた世間話の内容 店長達大人の暴行は別に特別じゃない。 戦争で大切なものを失うのは、何も僕達孤児だけじゃない。 大人も軍人も、誰だって戦争の被害者だから。 誰かを責めなきゃやってられない気持ちもわかる…。 雅との世間話は明日、この町に留学生がくるって事 だから僕は正直わくわくしてた 雅には暢気だなって言われたけど、僕は初めて見るから 留学生ってのは……本当は名ばかりで 敵国の捕虜だ。 この町にやってくる捕虜達は、此の国の戦利品のようなもの。 お互いの国に利益があるらしいけど、それはあくまで政治家達の間だけ。 留学生は…自らの意志では選べないんだ 無理矢理兵士に連れられて……敵国で奴隷の様な一生を終えるらしい 僕は、此の国が嫌いだ。 でもやっぱり、大切なものを奪っていった彼の国も大嫌いだ だから、敵国の奴らがこの町で足蹴にされてこき使われるとこ…ちょっと見てみたかったりして でも、全ては上辺。 戦争も、憎しみも、優しさも… 上っ面で唱えた机上の空論。 そんな事はわかってる。 わかってるつもりでいた。 だけどそれを明日…… 身を以て知らされる事になる。
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