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「はぁ…誰もこねーな」
「そりゃ、チラシも見てないのに」
「ぐあー!部長みたいに放っておくほうがよかったのかぁ?!そしたら俺らみたいなのが来たかも…」
「どうだろうなあ。部長は廃部になったら仕方ないなって諦めてたらしいぞ」
「まじかよぉ…」
チラシを部室におくと僕らはHRに間に合うようにと教室へと急ぐ。
三年間クラス替えのない学校なため、クラス仲は良好だ。だから多少の遅刻だと笑って許されるが最近続いているしな。
「お。二人ともお疲れ」
「マジ疲れてるんだよ、寝かせれー」
「ちょ、浅井?HR始まっちゃうって」
「湯央、ほっとけほっとけ」
「んー…うん」
湯央奈々。この子は多分大志のことが好きなんだと思う。
僕と席が近かったことから、よく話すようになったのだが大志のことをいろいろ聞かれた。
大志と話すときだって、拗ねてみたりちょっとしたことで喜んだりとあからさまな態度なわけだが…
相手が大志なだけに気づかれることなく一年が経ってしまったのだ。
「あ、そうだ。松岡、コレなんなのよ!」
そう言ってカバンから一枚の紙切れを出した。
湯央が出した紙には汚い字でやたらデカク「天文部カモン!」と書かれたチラシだった。
「なによ、カモンって。いまどきないでしょ、これは。あんたら、天文部なんだから星の絵を描くとかそういうの思いつかないの?」
「星ならここに。」
「これ星だったの?!印刷ミスだと思ってたわ…」
「第一、これ描いたの全部大志だって。僕は昨日の夜中持ってこられて大慌てでコンビニ行って印刷しただけだって。」
「何枚よ」
「ん、三百?」
「あんたら、ばっかじゃないの?!紙に謝りなさい!コピー機にも謝りなさいよ!そして無駄遣いしてごめんなさいってお金にも謝って!」
「わ、わわ!ごめん、ごめんって!」
「松岡あんたね、浅井が言ってきたことなんでもほいほい聞かないのっ!自分の頭使って考えてから実行しなさいよ!」
「いや、だって部員集めには…ごごごめんって!」
結局僕はHRが始まるまで湯央に説教されるはめになり、大志はといえばHRが終わっても起きようとしなかった。
湯央がめんどくさそうに、けどどこか嬉しそうな感じで起こしているのをぼーっと見ているのは面白いもんだった。
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