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「大志、行こうか」
「悟史いってらっしゃい~~~~」
「お、おぉぅ?!おいおい、このままだと廃部になっちゃうって。来週までに最低でも一人だぞ?」
「俺は前部長のように気長に待つよ…」
「諦めるのかよ。そしたらこの望遠鏡、部長に返せるんだな?僕は嫌だから、お前行けよ?」
「それ言うなよぉ…」
それでも大志は席を立とうとしない。
この一週間ずっと勧誘活動を続けていたが、見学者さえ来ない。
なげやりになるのだってわからないでもないが、駄目なのだ。
確かに僕らはそこまで星が好きなわけでもない。
けど、部長が卒業のとき自分の持っている望遠鏡の中から二番目にいいやつを部の備品として残してくれた。
「一番は、だめ」と、苦笑いしながら…。
この望遠鏡は、この部がもしなくなってしまったときに返すという約束だ。
僕らが卒業した後もその約束はかわらず、部があり続ける限りずっと置いておくと
いいと言ってくれたのだ。
二度と部長の手元には戻ってこない。そう願っているのは部長自身に違いないのだ。
だから何があっても僕らの代で部長に返すなんてことは起こってはいけない。
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