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「しっつれいしまーす」
そんな時、教室の扉が勢い良く開いた。
ノックもしないでなかなか態度のデカイ新入生が来たものだと振り返ると湯央が呆れた表情を覗かせて立っていた。
「…お前か」
明らかに声のトーンを落とした大志はそのまま再び机に突っ伏した。
「ごめんねー!かっわいい一年生じゃなくってさー。つかあんたら何よ、この辛気臭い空気は!もし私が新入生だったらこの空気に負けて帰ってたわよ!」
「湯央、座ったら?」
「座るわよ。」
「偉そうだよなぁ~~湯央、暇なら悟史とチラシ配ってきてくれよ~~」
「おい、大志…」
湯央は少しムっとした顔をするとそのまま椅子には座らず、ツカツカと大志の後ろに立ち思いっきり背中を叩いた。
「っっってぇぇえ?!」
「何よ、しゃきっとしろって言ってるの!」
「何も叩くことないんじゃねーの!?」
そう言いながら目に涙をため、大志は熱くなった背中をさする。
ふと、手にパリっとした感触。
「何だ、これ」
大志が背中から取ったものを僕も一緒に覗き込む。
「コピー、馬鹿みたいにするんじゃないわよ。まずは五十枚。なくなったら追加しなさい」
「えっと…湯央?」
「何よ!いらないなら返して!」
「「い、いります!」」
湯央が作ってくれたチラシは大志が作ったのと並べることでさえ失礼なほど、丁寧に、少し可愛く綺麗に作られていた。
「すげえ!」と感激しながら大志に手を握って感謝され、真っ赤になりながら「暇だったの!」と言っていた。
…素直じゃないなぁ。
「これであと三人くらい入ってくれるな!同好会じゃねーぞ、部として復活だ!なあ!悟史!」
「わ、わからないでしょう!チラシ受け取ってもらえても来るかどうかわかんない」
「受け取ってもらえる自信はあると。」
「う、うっさい!」
湯央はそれから、「居辛い!」と言って部室を出て行った。いつもと扱いが違うことが原因だろう。
僕はもう一度お礼を言おうと彼女を追いかけた。
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