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「別に何もしなくていいって言ってたけどさ」
「そんなの最初だけでしょ。副ってことは最終的には部長になるんじゃない?」
「俺、そんなの嫌だなぁ。」
「僕だって嫌だ」
お互い、仕切って何かすることを苦手としていたためこういった役職についたことはなかった。
小学校の遠足の班長にだってなりたくないがためにジャンケンを上手く切り抜け、当たることはなかたのだ。
「大志やれよ。目立つの好きじゃないか」
「げ…嫌だよ。お前すれよー『僕』同士でいいじゃないか」
「ほぉ?馬鹿にしてるんだな」
「ご、ご、ごめん」
結局何度かの言い合いの末、ジャンケンをすることになり二十回にも及んだあいこの末、僕が負けて副部長に就任した。
別に星に興味があるわけではない僕たちは自ら望遠鏡を覗こうとはしなかった。
部長について歩いているだけという感じだった。週に一度開催される夜の天体観測。
そのときに部長が「見てみ」と言って手招きしたときに望遠鏡を覗き名前も知らない流星群を見て感動をした。
それがきっかけになったのかもしれない。もしくは時間の経過とともに部長に洗脳されたのか…
僕らは星を見る楽しさを知り、星を知りたくなった。
部長はそれを喜び、いろいろと話を聞かせてくれたがプラネタリウムのアナウンスを聞くのと同じで眠くなる。
そんな姿を見て部長は苦笑いしながら「そのほうが君たちらしいけどね」と言った。
週に一度だった天体観測は場所を変えて何度も行われた。
夜中に集まって冬になると暖かいスープを片手にずっと星を見ていた。
しかし、そんな時間はずっとは続かない。
本来ならば夏休みで退部しなければいけなかったものの、部長は先生たちに珍しい我侭を言って残ってくれた。
それでも三月になるといつまでもゆっくりしていられない。
部長は地元の大学に進学するらしく、毎晩毎晩僕らと星を見ていてもちゃっかり浪人することなく受験に合格。
そして卒業の季節がやってきてしまったのだ。
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