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どれだけ流されたのだろうか。
意識も朦朧とし、体力も限界であったそんな時。
遠のく意識の中、悠生は男の叫び声を聞いた。
「大丈夫か!?
今助ける!!」
濁流に紛れていたが、確かに悠生の耳に届いた。
(…良かった。
助かる。)
男は何の躊躇いもなく、流れの激しい川の中に飛び込んだ。
悠生は動かない体で必死に男へ向かって手を伸ばした。
男の大きな手が悠生の小さな手を掴んだ。
男はそのまま悠生を引き寄せ、しっかりと抱き、岸に向かって泳いだ。
「…げほっ…げほっ…
おい、大丈夫か?」
男は悠生を軽く揺すりながら声をかけた。
悠生は浅い呼吸をしながらも弱々しく頷いた。
しかし、瞼が重くて目を開くことができない。
体も鉛のように重く、指先一本すら動かすことができない。
悠生の意識は急激に遠のいていった。
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