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「家はどこだ? “ゆうき”の体調が良くなったら、家まで誰かに送らせよう。」 「家は東京だよ。」 「とうきょう? 聞いたことがないな。 どのあたりだ?」 悠生は眉をひそめた。 「東京は日本の真ん中らへんだよ。 ここ、東京じゃないの?」 「あぁ。 ここは京だ。」 「きょう? それってどこ? 東京からは遠いの?」 悠生の表情がみるみるうちに崩れていく。 「京は日本の真ん中より少し西側にある。 帝が住んでおられる所だ。」 「みかどって…誰?」 「…帝を知らないのか? 帝は日本で一番高貴で偉いお方だよ。」 桂はなるべく易しい言葉を選んで話す。 「…天皇のこと?」 「あぁ、そうだ。 今は孝明天皇がその位に就いておられる。」 「こうめい…? 今の天皇はそういう名前なの?」 悠生は首を傾げた。 「名は統仁とおっしゃる。 それから、言葉遣いには気をつけなさい。 天皇に対しては、如何なる時でも敬意を払わなくてはならないよ。」 「…うん…。」 悠生は桂の言葉の半分も理解していなかったが、素直に頷いた。
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