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「でも…。」 悠生は恐る恐る口を開いた。 「天皇は東京に住んでるよ。 この前、遠足で天皇のお家見に行ったもん。」 今度は桂が眉をひそめた。 「なに?」 桂は顎に手を当ててしばらく考え込んだ。 「もしかしたら、その“とうきょう”というのは、東の京と書くのではないか?」 悠生は首を傾げた。 すると桂は和紙に“東京”と書き、悠生に見せた。 「こういう字を書くのではないか?」 悠生はその見覚えのある字に大きく頷いた。 「そう。 多分こういう字!」 「やっぱりそうか。 “とうきょう”というのは江戸のことだったのか。 東の京…か。 なるほどな。 だが、これで繋がったよ。 “ゆうき”は勘違いをしている。 君が見たのは天皇の御所ではなくて、江戸城だよ。 徳川幕府の将軍が住んでいる城だ。」 桂は諭すように言った。 「徳川幕府って…? 徳川家康のこと?」 「いや、徳川家康とは少し違うよ。 幕府とは武家政治を行う役所を指す言葉だ。 まぁ、武家政権そのものを指す場合もあるがな。 そして徳川幕府とは、慶応八年に初代将軍である徳川家康公が江戸に開いた幕府のことだよ。」 悠生はポカンとした。 全くもって理解不能であった。
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