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桂はゴホンと一つ咳払いをし、「つまり。」と付け加えた。
「我々武士の…あ~いや。侍達の頂点に位置するお人が将軍だよ。」
悠生はクリクリした目を瞬かせた。
「お兄さん、お侍さんなの!?」
悠生の驚きように、桂もまた、目をパチクリさせた。
「あ、あぁそうだが…。
侍などそう珍しくなどないだろう?」
「ううん、僕お侍さんなんて初めて見たっ!
本の中でしか見たことなかったもん!」
興奮しながら話す悠生に桂は訝しげな視線を送った。
「何を言っているんだ。
侍なぞ街に行けば沢山いるだろう?」
「いないよ。
だってお侍さんはずっと昔の人だよ。
いるわけないよ。」
桂は絶句した。
ー侍がいない?ー
自分の聞き違いだろうか。
「“ゆうき”、侍はいるよ。
まぁ、あのような事があった後だし記憶が混乱しているのだろう。
ゆっくり休んで、いろいろと思い出したらいい。」
「ううん。
僕、混乱なんてしてないよ。」
悠生はハッキリと告げた。
「いや、しかし…。」
どうしたものだろうか。
桂は困ったような表情を作った。
その時、襖の向こうから「失礼いたします。」という女性の声が聞こえた。
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