7/10

362人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
桂はゴホンと一つ咳払いをし、「つまり。」と付け加えた。 「我々武士の…あ~いや。侍達の頂点に位置するお人が将軍だよ。」 悠生はクリクリした目を瞬かせた。 「お兄さん、お侍さんなの!?」 悠生の驚きように、桂もまた、目をパチクリさせた。 「あ、あぁそうだが…。 侍などそう珍しくなどないだろう?」 「ううん、僕お侍さんなんて初めて見たっ! 本の中でしか見たことなかったもん!」 興奮しながら話す悠生に桂は訝しげな視線を送った。 「何を言っているんだ。 侍なぞ街に行けば沢山いるだろう?」 「いないよ。 だってお侍さんはずっと昔の人だよ。 いるわけないよ。」 桂は絶句した。 ー侍がいない?ー 自分の聞き違いだろうか。 「“ゆうき”、侍はいるよ。 まぁ、あのような事があった後だし記憶が混乱しているのだろう。 ゆっくり休んで、いろいろと思い出したらいい。」 「ううん。 僕、混乱なんてしてないよ。」 悠生はハッキリと告げた。 「いや、しかし…。」 どうしたものだろうか。 桂は困ったような表情を作った。 その時、襖の向こうから「失礼いたします。」という女性の声が聞こえた。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加