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桂が「入れ。」と一言かけると静かに襖が開き、若い女性が一人、水を張った盥を手に持ち入ってきた。
「あぁお幸。
ご苦労だったな。」
お幸はゆったりと上品に笑んで「いいえ。」と言った。
「凄い!!
それ本物!?」
悠生が興奮して声をあげた。
桂とお幸は顔を見合わせてポカンとした。
「それだよ!
その髪の毛!
それって鬘?」
幸の綺麗に整えられた日本髪を指で指し示して言う悠生。
「いえ…。
鬘ではございませんが…。」
幸の後を桂が引き継ぐ。
「“ゆうき”のお母上はこのような日本髪に結ってはいなかったのか?」
「うん。
だってお母さんは髪の毛短かったから。」
桂と幸は驚いた顔をした。
「髪が短いとは…。」
「…珍しいですね。」
今度は悠生もポカンとした。
「別に珍しくないよ。
僕のクラスにいる有紀ちゃんや啓子ちゃんだって短いし…。」
「くらす…?」
二人はさらに目を点にした。
「うん。
僕、一年二組なんだ。」
桂と幸は顔を見合わせた。
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