8/10

362人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
桂が「入れ。」と一言かけると静かに襖が開き、若い女性が一人、水を張った盥を手に持ち入ってきた。 「あぁお幸。 ご苦労だったな。」 お幸はゆったりと上品に笑んで「いいえ。」と言った。 「凄い!! それ本物!?」 悠生が興奮して声をあげた。 桂とお幸は顔を見合わせてポカンとした。 「それだよ! その髪の毛! それって鬘?」 幸の綺麗に整えられた日本髪を指で指し示して言う悠生。 「いえ…。 鬘ではございませんが…。」 幸の後を桂が引き継ぐ。 「“ゆうき”のお母上はこのような日本髪に結ってはいなかったのか?」 「うん。 だってお母さんは髪の毛短かったから。」 桂と幸は驚いた顔をした。 「髪が短いとは…。」 「…珍しいですね。」 今度は悠生もポカンとした。 「別に珍しくないよ。 僕のクラスにいる有紀ちゃんや啓子ちゃんだって短いし…。」 「くらす…?」 二人はさらに目を点にした。 「うん。 僕、一年二組なんだ。」 桂と幸は顔を見合わせた。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加