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帰る術も分からない。
誰一人、知り合いはいない。
誰を信じ、誰を信じてはいけないのかも分からない。
悠生は泣きながら夜の真っ暗な道を歩いた。
どれほど歩いただろう。
悠生は川沿いの小道で何かに躓いた。
大きなものだった。
真っ暗でそれが何なのかは分からなかったが、触ってみるとそれが人だということが分かった。
「…だっ…だぃ、大丈夫?」
悠生はその人をユサユサと揺すり起こそうとした。
悠生がその人の背中に手をついた時、生暖かい液体が手にベットリと付着した。
悠生が慌てて手を引っ込めた時、雲で覆われていた満月が顔を出し、辺りを照らした。
「うわぁぁぁああああ!!」
悠生は叫び声をあげた。
死体があった。
刀でバッサリと斬られ、絶命している侍が悠生の目の前にいた。
悠生は地べたに座り込んだ。
逃げ出したくても、金縛りにあったかのように体が動かない。
悠生にはただただ泣き声をあげることしかできなかった。
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