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「会合の帰り道で会ったんだ。
大丈夫、心配ない。
それより、悠生を湯に入れてやってくれ。
酷い汚れようだ。」
「承知いたしました。」
幸は桂に一礼すると、悠生の手を引き、風呂場に向かった。
悠生は熱く沸かされた湯に浸かりながら、これからのことを考えた。
どうすればいいのかなんて、ちっとも分からなかったが、ただ一つハッキリしていることは『ここは自分が今まで住んでいた世界ではない』ということ。
もともと桂や幸に会って話をしていた時から悠生なりに違和感は感じていたのだ。
そして、外に出て街の様子を見て確信した。
ーここは過去の世界だとー
どれくらい昔であるのかは分からないが、とにかく自分は大変なことになっているのだ。
今、この世界に悠生が頼れる人間は二人しかいない。
ー桂と幸ー
この二人にどう言えばいいのだろうか。
二人は悠生がもとの世界に戻る方法を知っているのだろうか。
自分はこれからどうなるのだろうか。
「…お母さん…
…お父さん…。」
悠生は急に孤独と不安の波に襲われ、湯船に涙を落とした。
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