362人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
湯から上がった悠生は薄暗い廊下を素っ裸で歩いていた。
「お兄さん~。
幸さん~?」
呼んでみるが、返事はない。
悠生の瞳から止まったはずの涙がまた溢れてきた。
「“ゆうき”?」
後ろから声がした。
見ると今さっき通り過ぎた部屋の一つから桂が顔を出している。
「どうしたんだ。
そんな素っ裸で。
せっかく湯に入ったのに湯冷めしてしまうではないか。」
悠生は桂の元までペタペタと走っていき、手に持っていた白い着物を差し出した。
「どうやって着るのか分かんない…。」
桂は目をパチクリさせたが、取り立てて言うことはせず、悠生を部屋に招き入れた。
「あら“ゆうき”君。
ごめんなさい。
早かったのね。
今、桂さんにも替えの着物をお持ちしていたの。」
部屋の中にいた幸が申し訳なさそうに言った。
「お幸、着せてやってくれ。」
「はい。」
幸は手際良く悠生に着物を着せた。
最初のコメントを投稿しよう!