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「“ゆうき”、京にはお母上やお父上と来たのか?」
桂にそう聞かれた悠生は首を横に振った。
「そうか。
そうだよな。
では…。」
顎に手をあて、考え込んでしまった桂。
「桂さん?」
幸が声をかけると桂は顔をあげた。
眉間には皺が寄っている。
「“ゆうき”が流されていたのは宇治川だった。
宇治川は琵琶湖から流れる唯一の川だ。
つまり、どう考えても“ゆうき”が江戸周辺から流されてくるなんてことは有り得ないんだよ。」
桂はさらに続ける。
「それから、東京という地名も念のため調べさせたが、そのような地名はこの辺りにも近江の方にもやはりないようだ。」
「まぁ!
ではどうして…?」
再び考え込んだ桂に、悠生は思い切って声をかけた。
「僕、多分…未来から来た。」
桂と幸はポカンとした。
「僕、昔に来ちゃったんだ!
だからっだから…。
家はここにない…。
お父さんもお母さんも…いない…。」
悠生は必死に訴えた。
信じてもらえなかったらどうしよう。
頭がおかしいと思われて、ここから追い出されたらどうしよう。
そんな考えが悠生の頭の中をぐるぐる回る。
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