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幸に案内された部屋には、すでに布団が敷いてあった。
悠生はすぐに布団に潜り込んだ。
普段は両親の間に挟まって、所謂サンドイッチ状態で寝ている悠生には、温もりのない冷たい布団は居心地が悪かった。
現代の枕より二倍も三倍も高く、硬い枕では結局寝付くことができず、悠生は枕を脇に避け、頭をコテンと白い布団の上に転がした。
そうして、目を瞑ってしばらくすると、ゆるゆると睡魔がやって来た。
悠生は睡魔に抗うことはせず、徐々に深い眠りの中に落ちていった。
悠生は闇の中にいた。
辺りを見回しても何も見えない。
耳をすましても何も聞こえない。
悠生は闇の中をさまよい歩いた。
しばらくそうしていると、前方から一人の男がこちらに向かって歩いてきた。
白い着物を来た、学者のような顔をした男だった。
男は悠生を見つけると、目元だけで笑った。
「すまないね。
こんな遠くまで連れてきてしまって。」
男は言った。
「誰?
あなたが僕をここに連れてきたの?」
「私はやり残したことがあった。
しかし、それはいづれ私の弟子達が代わりに成し遂げてくれるだろう。」
「ねぇっ!!」
悠生の声など聞こえていないかのように、男は淡々と続ける。
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