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「どういうこと?」
男は悲しそうな顔をした。
「すまない。
これは私の我が儘なんだ。
私の欲望が、君を巻き込んでしまった。
だから、私の願いが叶ったその時、君は元の時代に帰ることができる。」
「それはいつ叶うの?」
悠生の問いに男は静かに首を横に振った。
「すまない。
分からない。」
男は何度も「すまない。」と悠生に謝った。
悠生はそんな男を責めることはできなかった。
「あの…。」
男に聞きたいことが沢山あるはずなのに、上手く言葉にできない。
何から聞けばいいのかも分からない。
結果、悠生の口から零れるのは、「あー。」とか「うー。」という音ばかりであった。
しばらくそうして無意味な時を送っていると、唐突に男が口を開いた。
「すまない。
もう時間だ。」
見ると、男の体が徐々に透けていくのが分かった。
悠生は焦った。
まだ何も聞いていない。
「待って!!」
「本当にすまない。
もう行かなければならないんだ。」
男は背を向けた。
悠生はできる限りの音量で叫んだ。
「あなたは誰ですか!?」
男は立ち止まり、フワリと笑った。
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