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時刻は真夜中。
仕事を終え、自室の寝床で早々に寝入っていた桂は、ふと泣き声を聞いた気がして起き上がった。
何時もに増して人の足音も賑やかだ。
「何事だ?」
桂は布団から出て、寝間着姿のまま部屋から出た。
桂は泣き声のする方へ近づくにしたがって、嫌な予感がした。
泣き声の元に辿り着くと案の定、小さな人だがりの中心で泣き喚く悠生がいた。
桂と同じく寝間着姿の侍達が悠生を取り囲んで、どうすることもできずにいる。
桂はまだ悠生の存在を他の者に話してはいなかった。
だから皆こうして対処に困っているのだ。
―追い出していいのか、否か―
取り囲んでいる侍達の中の一人が桂の存在に気付いた。
「お休み中、申し訳ございません。
桂さん。
すぐに追い出しましょうか?」
まだ若い青年であった。
「いや、この子は昨日から俺の小姓として雇っている子なんだ。」
「え、この子供がですか?」
青年も、他の侍達も驚いたように顔を見合わせた。
「まぁ、いろいろと事情があってね。
すまない。
後は俺が何とかするから、皆はもう休んでくれ。」
桂は周りの侍達に言った。
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