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周りを取り巻いていた侍達を各自の部屋に返し、桂は悠生を腕に抱き、部屋の中へ入った。
「落ち着いたか?」
泣き疲れたのか、ぐったりと桂にもたれ掛かりながら、時々嗚咽を零す悠生。
しばらくそうしていると、襖が開き稔麿が片手に盆を持って部屋に入ってきた。
「どうぞ。」
「ありがとう。
さぁ悠生、水だよ。
これを飲みなさい。
気分が落ち着く。」
悠生は差し出された水をゆっくり飲み干した。
そしてまた桂にしがみつく。
「怖い夢でも見たか?」
悠生はコクコクと何度も頷いた。
「…お母さんとっ…っう…お父さんがっ……ひっくぅ…っ。」
桂はヨシヨシと悠生の背中を撫でた。
「僕のことっ…探してる…っ…か…かぇっ…帰れなかったら……もうっ…会えな…いの…っだ…からっ…どぅ…どうしよ…うぅ…。」
悠生はしゃくりあげながら必死に言葉を紡ぐ。
「大丈夫。
きっとそのうち父上や母上の元に帰れる。
だから心配するな。」
悠生と桂の会話を聞いて、事情を知らない稔麿は眉間に皺を寄せ、訝しげに桂を見た。
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