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「桂さん、この子は一体…。」 「すまない、栄太郎。 詳しい事はまた後で説明するから…。」 「はい…。」 稔麿はまだ腑に落ちなかったが、素直に頷いた。 「君も早く休みなさい。 疲れているだろう。」 「いえ、桂さんがまだお休みになられていないのに、私だけ休むわけにはいきません。」 桂はクスリと小さな笑みを零した。 「栄太郎は昔から本当に律儀だな。」 桂はいつの間にか腕の中でスヤスヤと寝息をたてている悠生をそっと布団に寝かせた。 「…この子には、ある事情があってな。 親元から離れてしまって、帰りたくても帰れないんだ。 だから、俺が預かることにした。」 「その事情とは?」 「それはまた明日話すよ。 奈津や義助達にも聞いて欲しいからな。」 「分かりました。」 桂は悠生の柔らかな髪を指先で弄りながら、目を細めた。 「俺には、この子の気持ちが少しだけ分かるような気がする。 もちろん、事情や状況は全く違うが…。」 桂はちょうど、悠生と同じ年頃くらいに末期養子に出されていた。 桂はもともと長州藩の藩医を勤める和田家の長男であったが、幼少期は病弱であったため、長生きしないだろうと思われたのだ。
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