362人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
翌朝、太陽が昇って間もない頃、悠生は叩き起こされた。
「いつまで寝ておるのじゃ!
仕事じゃ、仕事!
さっさと起きんか!
馬鹿者っ!」
盛大な怒鳴り声と共に掛け布団を剥ぎ取られ、悠生は慌てて起き上がった。
寝ぼけ眼で自分の目の前に仁王立ちしている人物を見上げる。
眉を吊り上げ、唇をへの字に曲げている。
長い黒髪は首の後ろで無造作に束ねられ、大きな吊り目は真っ直ぐに悠生を睨み付けている。
袴をきっちり着て、いっちょ前に腰に大小(大刀と小刀)を挿しているが、まだ齢十六、七の少女である。
一見すると少年のようにも見えるその少女は、未だに寝ぼけている悠生の襟首をひっつかみ、 少女とは思えぬ豪腕で引きずった。
「痛いっ…いたたたっ…!ちょ…ちょっと!放してっ…!…ちょっ!」
悠生はジタバタ暴れるが、無駄な抵抗に終わった。
引きずられ、連れて来られた場所は水場であった。
「ほら、さっさと顔を洗って、身支度整えな!
お前の着物は部屋に置いてあるからそれに着替えるんじゃぞ。」
少女はそう言い残して、去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!