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「僕本当に未来から来たんだよ。 本当だよ。」 悠生はそう訴えたが久坂には訝しげな目で見られてしまった。 「ほらほら、本人が本当だって言ってるだろう?」 「そんなにあっさり信じるのですか? 証拠も何もないのに。」 「未来から来たなどとは面白いじゃないか。」 幸と稔麿がクスリと笑った。 奈津は始終満面の笑顔である。 「でましたよ。 桂さんの悪い癖が。」 悠生以外は心得ているのか、顔を見合わせて意味深に笑んでいる。 「悪い癖って?」 一体何の事なのか。 「好奇心の虫だよ。」 稔麿が答え、幸が引き継ぐ。 「桂さんは人一倍慎重なくせに、人一倍好奇心旺盛な方なんですよ。」 悠生は目を丸くして、苦笑している桂を見上げた。 どうもそのようには見えなかった。 「まぁ、とにかく。 奈津、頼んだよ。」 「はい。」 「それと…。」 桂は懐から一枚の紙を取り出した。 「昨日からずっと考えていたんだ。 これでどうだろう。」 そこには“勇希”と達筆に書いてあった。 「勇ましい希望と書く。 良い字だろう。 “ゆうき”の漢字が分からないと言っていたからな。」 どうやら“ゆうき”の漢字を考えてくれたらしい。
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