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「勇希。」
久坂が呼び掛けた。
「これから日本はどうなるのだ?
未来から来たのであれば知っていよう。」
勇希は困った。
どうなるのだと聞かれても、今の時代がいつなのか、それさえも分からない勇希に答えれるはずもなかった。
「待て、義助。
それは俺達が今知ることではないだろう。」
「しかし、それを知ることによって今後の我らの勝機は各段に違ってきます!」
「だが、やはり知るべきではないよ。
我々は今この時代を生きなければならないのだから。
それに未来というのは我らの手で切り開いてゆくものだ。
定められた未来を切り開いてどうする。
新時代は我らの手で作り上げていく。
我らは幕府や薩摩の情報が必要なのであって、未来の情報というのはさほど必要ではないよ。」
「しかし…。」
「仮にもたらされた情報が長州の敗北であったらどうする?
それでも戦うのだろう?
ならば志気が落ち、心に少しでも迷いが生まれるような情報はいらない。
まぁ、勇希の情報が正しいとも限らないしな。
もし正しくない未来の情報を得れば、大変なことに成りかねない。」
久坂は渋面を作ったが、「分かりました。」と言って引き下がった。
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