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涙を堪えながらも、さらに待つこと半時。 漸く完成したらしい返事の手紙を屋敷の奉公人から受け取り、奈津は大事そうに懐にしまい込んだ。 その帰り道、奈津はふと一軒の店に入った。 後に付いて中に入ると、何やら色々な匂いが入り混じっている。 正直、良い匂いではなかった。 奈津は奥の古い椅子に腰掛けている初老の男に声を掛けた。 「主人、いつものを頼む。」 すると店の主人である男はクツクツと笑った。 「また何か面倒な事でも起きたかい?」 「いや、先生にとってこれは手放せない必需品なんじゃ。」 「なるほど。 ところで、そこに突っ立っとる童はお前さんの連れかい?」 主人が勇希に視線をやり、奈津もそれに合わせる。 「あぁ、そうじゃ。 先生が連れてきた子供で、今日からわしと同じ小姓じゃから、わしが面倒を見ちょる。」 「これはこれは。 こんな小さな童を小姓にするとは…桂先生も酔狂なことをするなぁ。」 「そこがまたええところじゃて。」 奈津は主人から紙袋を受け取り、丁寧に頭を下げて店を出た。 勇希は終始ボーっと突っ立ったままだった。
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