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奈津は眉を寄せた。
「関わらんに限る。
勇希も町中で壬生浪士組を見かけたら、すぐに“桂小五郎直伝必殺逃亡術”を使うのじゃぞ。」
勇希は頷いた。
奈津と勇希は壬生浪士組の男達が通り過ぎ、見えなくなったのを確認して、道に出た。
「ねぇ、奈津さん。
その紙袋は何?」
勇希は先程の店で奈津が受け取った紙袋を指差した。
「これは桂さんからの頼まれものじゃ。
気に病む事が色々とおありのようだからのぅ。」
勇希は首を傾げたが、奈津はそれ以上話してはくれなかった。
途中で昼食をとり、勇希の歩調に合わせてゆったりと歩き、その他諸々の雑用を済ませ、長州藩邸に辿り着いた頃には、もうすでに日も落ちていた。
「お帰り、遅かったね。
もう皆夕餉は済ませてしまったよ。
お幸が二人の夕餉を用意しているよ。」
門をくぐり抜けたところで出迎えてくれたのは、人の良い笑顔を浮かべた稔麿であった。
「なんじゃ。
もうそんな時間か。
どうりで腹も減ったわけじゃ。
ところで桂先生は自室にいらっしゃるかのぅ?」
「いや、確か桂さんなら湯を浴びているはずだよ。」
「何!?」
奈津は顔色を変えた。
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