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が。
「ダメじゃっ!ダメっ!
このわしを差し置いて桂先生と一緒に入浴などっ!
わしも一緒に入りたいのにっ!
それにっ!
この小僧の笑顔っ!
絶対何かやましい事考えちょりますよっ!」
「お前が言えることか…。」
稔麿の呟きはスルーされた。
「いやいや、俺が奈津と一緒に入浴するのはマズい。
とてもマズいよ。」
「僕、やましい事考えてないよ。」
奈津はニッコリと綺麗に笑んだ。
「わしは純粋に桂先生の麗しいお姿を拝見したいのじゃ!
素っ裸なんて入浴中以外拝見できないしっ!
そんなおいしい思いを小僧にだけさせてたまるかっ!」
(いえいえっ!
わしは小姓としての仕事をするだけでありますっ!
日々お国のために身を粉にして働く桂先生のお背中をお流ししたいのです。)
「逆ぅぅううううっ!!
建て前と本音が逆っっ!!
桂さんっ!
この女こそまさに危険思想の持ち主ですよっ!」
桂は引きつった笑顔を元に戻せないでいる。
「…勇希…。
また今度にしよう。」
「…うん。」
勇希はこの時、奈津の“桂先生がいっとう好き”という言葉の真の意味を図らずも理解してしまった。
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