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賑やかだった辺りも静まり返った深夜。
勇希は一人布団の中でゴロゴロしていた。
どうも落ち着かない。
白いシーツをギュッと掴んでみる。
やはり落ち着かない。
慌ただしく過ぎた昼間は何も考えずにすんだ。
少なくとも寂しくはなかった。
しかし、こうして一人になると考えるべきことが多すぎる。
昨晩、さんざん泣いて桂や周りの者達を困らせた覚えがあったが、それでもまだ涙は溢れてきた。
勇希は布団に顔を埋めた。
丸くなって寂しさを堪える。
「勇希、おいで。」
襖が開き、声がしたので、布団からそっと顔を覗かせるとそこには寝間着姿の桂がいた。
手招きをしている。
勇希を心配して、様子を見に来たのだ。
「来なさい。
一緒に寝よう。」
勇希は流れる涙はそのままに、桂の懐に飛び込んだ。
そのままギュッと抱きつく。
桂は勇希の背中をポンポンと規則正しく叩いた。
それはどこか母親の仕草に似ていた。
つい一昨日までは隣にいた両親がもう懐かしい存在となっていた。
その心地よさに勇希はいつしか眠りについた。
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