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日差しがギラギラと輝き、立っているだけでボタボタと汗が流れ落ちる。 もちろんこの時代、エアコンなどというハイテクなものなどあるはずもなく、人々は様々な工夫をして暑さを凌がなければならなかった。 そんな真夏日。 勇希は文を受け取った。 桂小五郎宛てである。 しかし当人は今朝早くから久坂や稔麿と共に会合に出掛けて留守である。 勇希は手紙を両手に持ってしばし眺めてみた。 勇希には達筆なのか、そうでないのかいまいち分からないが、とにかく小筆で“桂小五郎殿”と比較的大きな字で書かれている。 裏返して見ると、これもまた同じ字で“高杉晋作”とある。 「お友達かなぁ?」 桂の友達なら、きっと良い人なのだろう。 勇希は純粋に会いたいと感じた。 どのような人なのか。 この字のように大きくて豪快な人なのだろうか。 優しければ嬉しい。 勇希はここの所、毎晩桂と共に就寝していた。 桂が仕事でいない時は、稔麿や奈津の布団に転がり込んだ。 稔麿は人当たりが良く、勇希にも親切にしてくれた。 奈津には桂と一緒に寝ていることで随時敵意を向けられているが、それでも何だかんだ言って、勇希の世話をやいてくれていた。
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