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しかし、久坂は違った。
元来生真面目な性格の久坂とだけは、なかなか打ち解けることができないでいた。
小姓の仕事を失敗する度に怒られてばかりいた。
桂に相談したところ『あいつは昔からああなんだ。でも悪い奴じゃないからその内打ち解けれるよ。』と言われた。
勇希は桂の自室の机の上に手紙をそっと置いた。
机の上には相変わらず大量の書類が散乱している。
桂はいつも夜遅くまでこの文机で書類とにらめっこしている。
そんな時勇希は桂の仕事が終わるまで待つのだが、たいていは眠気に勝てず、桂の柔らかくない膝の上に頭を転がす。
周りの気遣いのおかげで、最近は両親を思って大泣きするということはなくなっていた。
勇希は畳にゴロンと横になった。
ひんやりとした畳が心地良い。
やがて勇希はスヤスヤと寝息をたて始めた。
「…き…ぅき…勇希。
起きなさい。
こんな所で寝ていては風邪をひく。」
会合から帰ってきた桂は自室で寝こけている勇希を揺すり起こした。
「う…ん…。
あぁ桂さん。
お帰りなさい。」
「ただいま。」
「桂さん、手紙来てるよ。」
「ありがとう。」
桂は勇希の頭をポンポンと撫でながら、手紙を手に取り、しばし固まった。
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