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「失礼します。」 襖の向こうで声がした。 久坂がサッと立ち上がり襖を開けると、そこには小柄な青年が一人立っていた。 あまりに童顔なので、青年というより少年のように見える。 「桂さん、書類をお持ちしましたよ。」 人の良い笑みを浮かべて桂に書類を渡す。 青年は桂の膝の上に陣取っている勇希に目を写した。 「こぉんな所で何やってんのさ。 ここはガキが入っていい場所じゃないぞ。」 勇希はムッとして言い返した。 「ガキじゃないもん! 桂さんの小姓だもん!」 青年は一瞬眉を寄せたが、フッと笑った。 「まぁいいさ。 僕は心の広い男だからね。 それに小さい奴を見ているのは実に気分がいい。」 「子供は成長が早いからな。 今にお前の身長を抜くぞ。」 久坂が嘲笑った。 青年のこめかみにビシッと筋が浮いた。 「これはこれは…。 自他共に認める長州随一の毒舌男の久坂さん。 居たのかい? 気付かなかったよ。」 「そうか。 それより、書類の枚数が明らかに足りない。 今日までが期限だと言ったはずだが。」 「あぁ、安心しなよ。 君への恋文を紙一面に書いておいたから。」
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