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「ねぇ、桂さん。
山田さんは桂さんのお友達なの?」
「まぁ、そうだよ。
市は俺と同じ長州出身で今年十九になる。
勇希とも比較的年が近いから仲良くなれるかもしれないな。」
「お任せ下さい、桂さん。
僕は小さい子には優しいですから。」
山田は先程とは一変した猫なで声で言った。
「子供に優しいのは自分より体が小さいからだろう。」
「おだまんなさい。
久坂君。」
久坂と山田の不毛な言い争いを目尻に、勇希と桂は穏やかな一時を過ごすのであった。
「ねぇ、桂さん。」
勇希がノホホンと話し掛ける。
「山田さんって小さいの気にしてるの?
僕の家の近所のお姉ちゃんはもっと高かったよ。」
山田の動きがピタリと止まった。
久坂はフッと鼻で笑い、桂は元々青白い顔を更に青白くした。
「こんのガキャァァア!!」
「ひぃぃいっ!!」
阿修羅の如く我を忘れて怒りを撒き散らす山田に、勇希は震え上がって桂にしがみついた。
「子供とは時に残酷なものだな。」
「勇希もたった数日で結構逞しくなったな。」
長州藩邸は今日も賑やかである。
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