4/11
前へ
/83ページ
次へ
山南敬助と名乗った青年に手を引かれ、勇希は『壬生浪士組』と看板が掲げられている門をくぐった。 「あっ、山南さん!! どこ行ってたんですかぁ!! 今まで皆、蔵の掃除していたんですよぉ!! あれ?その子は?」 まだ若い青年が無邪気に駆け寄ってきた。 「ちょっと迷子を見つけてね。 もう日が沈むから、明日家を探してあげようと思って。」 「へぇ~、何か山南さんらしいですね。 私は沖田総司。 よろしく。」 沖田は勇希の目線に合わせてニッコリ笑った。 「僕、秋山勇希って言うの。 勇希はこういう字。」 勇希は最近覚えた字を地面に人差し指で書いた。 「近藤さんと同じ字を書くんだね。」 山南が言った。 「誰?」 「うちの大将だよ。 まぁ私の父親みたいな人かな。 こっちにいるよ!」 沖田は勇希の手を強引にグイグイ引っ張った。 「ほら、あれだよ! あの厳つい顔の人!」 沖田は更に引っ張る。 「いでででっ!!」 勇希の抗議の声など全く耳に入っていない。 「近藤さぁんっ!!」 「いたたたっ!! 腕抜けちゃうっ!!」 更にスピードを上げた沖田に勇希の腕はいよいよ本気で悲鳴を上げた。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加