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二人が同時に振り返ると、そこには縦にも横にもデカい大男が立っていた。
今の時代には珍しいくらいの大きさである。
「ちょっと俺と遊ばねぇかい?」
「いえ、申し訳ないが、ちょっと急ぎの用事がありますので。」
桂は丁重に断ったが男は桂の腕を掴む。
「いいじゃねぇか。」
稔麿は男の視線にあからさまな色が混じっているのに気づき、男を睨み付けた。
「男色ですか。
そういう事なら尚更お断り致します。
俺にはもう恋仲の女人がおりますので。」
桂はニッコリ笑った。
戦国時代には一般的であった男色も、今日ではもうだいぶ廃れてきている。
しかし薩摩などは稚児制度がまだ存在しているなど、一部の者の間では未だに流行していた。
「そんなこと俺が知ったことじゃねぇなぁ。
まぁ、無理矢理がお好みかい…?」
男は不気味に笑って腰の獲物に手を掛けた。
「困ったなぁ。
幾松に怒られてしまう。」
とは言いつつも、桂はちっとも困っているようには見えない。
「おや?」
刀に手を掛け、応戦しようとした稔麿が視線を上げる。
「なぁにをやっているのかのぅ…。」
奈津だった。
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