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悠生はいつの間にか見知らぬ川を流されていた。
落ちた用水路などとは比べ物にならないくらいの大きな川である。
流れる勢いも先程とは桁違いだ。
悠生は漠然と思った。
(…僕、死ぬの…?)
死にたくない、助けて、と叫びたくても、声にならない。
父と母の名を呼ぶ力もない。
悠生にはただただ流されるしか術はなかった。
苦しい。
痛い。
(…お父さん…
…お母さん…。)
悠生は泣いた。
悲しかった。
怖かった。
何かを考える余裕などなかった。
ただ、悲しみと恐怖だけが心を支配していた。
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