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質素な朝食を終えた勇希は、縁側に腰掛け、小さな庭で所狭しと竹刀を振るう沖田と藤堂を眺めていた。
力強い一太刀。
鋭い突き。
刀身が風を切る音。
草鞋が土を踏む。
舞うように動く足。
「勇希君もやってみる?」
ぼうっとしていた勇希の目の前にズィっと竹刀が差し出された。
顔を上げると、沖田が人懐っこい笑みを湛えている。
勇希は問われた意味を一瞬考えたが、理解した途端、慌てて首を振って辞退の意を示した。
「やってみなよ。
私達が教えてあげるから。」
藤堂も竹刀を振る手を止め、提案してくる。
「そうそう、教えてあげるよ。」
沖田に手を引かれ、無理矢理竹刀を握らされる。
困ったように突っ立っている勇希に、沖田が隣で見本だと言わんばかりに竹刀を振ってみせる。
「こうだよ。
ほら、勇希君、竹刀を振らないと。」
「う…うん。」
振ってみる。
風を切る音はしない。
「そうじゃなくて、もっとこう…思いっきり!!」
「でも、これ重いよ…。」
木刀よりも軽い竹刀とはいっても、幼い勇希の腕には重く感じる。
「そうだね、勇希君はまだ小さいから重く感じるかもしれないね。」
藤堂が勇希の頭をくしゃくしゃと撫でた。
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