‐第壱章‐

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薄暗く狭い空間。 自分が自分だという意識が溶けていく様なそんな感覚を覚える。 このまま消えるんじゃないかと、ふと考えてしまう。 しかし、身体には微かな振動を与えられ自分の存在を嫌でも認識させられる。 「おいっ、神村!!」 自分の名前を呼ばれ、ゆっくりと目を開ける。 薄暗さは変わらないが、目の前に人が立っているのはわかった。 上官だ。 「もうすぐ目的地に着くんだ!すやすや寝てるんじゃねぇぞ!」 胸倉を掴まれ、椅子から立たされた。 寝ていたつもりはないので素直に話そう…と思ったが、相手の鬼の形相の前では逆らえなかった。 「失礼しましっ……、」 言い終わるが早いか、次の瞬間には元座っていた座席に叩きつけられ左の頬には鈍い痛みが残っていた。
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