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朝、目が覚める。
ここ、ティム村は農業が盛んな田舎町。
御鏡はそこの農家の一人息子で17歳だ。
その辺にいるクソガキとなんら変わらない。
家系も代々農家で、物語みたいな『実は貴族』などの裏設定は存在しない。
「お~い、起きろ! 翔」
御鏡の父親が起こしにきた。
この父親、御鏡と同じく茶葉天然パーマで瞳は赤茶色。
顔つきも御鏡がちょっとだらしなくなったような感じで、御鏡が父親似だということがよくわかる。
「もう起きてるって」
御鏡はのそのそとベッドから身を起こし二階の自分の部屋から一階にある居間に降りた。
「今日は隣街に野菜売りに行くからな」
一階に降りるなり、御鏡父は御鏡に唐突に御鏡に告げる。
「…俺も来いと?」
「俺一人にあの野菜運べってか?」
そう言うと御鏡父は離れにある、野菜がたっぷり乗った手押し車を指差した。
「いつも俺一人に運ばせてるじゃんか」
すると御鏡父は耳を押さえて聞こえなかったふりをした。
「あ~あ、ウチの家系も能力があったらもっと楽できるのになぁ…」
「ないものねだりはやめろ」
御鏡がぼやくと御鏡父がぴしゃりと言う。
「奪われた物は仕方ないだろ?」
御鏡の家系は、御鏡のじいさんの頃までは能力が使えたが、盗賊に能力を〝奪われて今は〟使えない。
150年ほど前に現れた『能力珠』〈ノウリョクタマ〉。
それは、その名の通り、能力を入れるために作られた珠だ。
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