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「これは――…」
「はい、婚姻届です。俺の変わらぬ気持ちの証明になればと」
ためらわずに差し出したその婚姻届を見て、彼女の両親は絶句してしまった。
「…ですが、これを彼女が受け取ってくれるか分かりませんし、今は例え受け取ってくれたとしても、そのうち愛想を尽かされて処分されてしまうかもしれません。
それでも今俺が出来る事は、この気持ちを彼女に伝える事…ただそれだけです」
すると、親父さんが重い口を開いた。
「涼。お前は綾を…幸せに出来んのか?」
「さぁ…、どうでしょう。それは分かりませんね」
そんな曖昧な返事に、親父さんの眉がつり上がった…気がした。
それでも涼は話を続けた。
「俺は自分が出来る事なら全て、彼女の為に何でもしたいと思っています。彼女が幸せになる為ならどんな事でも…。
でも、それを彼女が幸せだと感じてくれるかどうかは…彼女自身が決める事ですから。
でも一つだけ…これだけは間違いなく言えます」
「何だ?」
「それは…彼女がそばにいてくれたら、俺は世界一の幸せ者だという事です」
俺の決意と綾への思いは、ちゃんと伝わったのだろうか。
もう、彼女の両親は俺が綾と離れる事について何も言ってこなかった。
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