1706人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当は、食事が終わったら話そうって思ってた」
先輩はそう言うと、懐を探って、小さな青いビロウド張りの箱をとりだして、私にさしだした。
「これ……?」
受けとりながら聞くと、先輩が頷いて続けた。
「ずっと不安だった。……俺、本当は不器用で、笑うのも、喋るのも苦手だったし。そんな俺が、猫ちゃんの事……引きとめておけるのか、って」
先輩の言葉は真剣そのもので、嘘なんてついていないようだった。
先輩が今まで、そんな事を考えながら一緒にいてくれていたなんて。
そう考えていたのは、私だけだと思っていたのに……。
先輩もずっと、不安だった――?
最初のコメントを投稿しよう!