第六章・―逃げる想い、掴む想い―

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「まぁ良いや。今日は俺、デートだったんだよ。それで丁度よく沙織(さおり)を連れているからだな、後は分かるな?」    知らなかったとはいえ、貴重なデートの時間を潰してしまったのか。そう思いながら俺は、海斗の背後から遠慮がちに出てきた沙織さんに小さくお辞儀をする。    そういえば俺が海斗の彼女とまともに会話するのは初めてで、沙織さんも微笑むと会釈しながら言ってくれた。   「今晩和、佐野先輩。初めまして、かな? 私、沙織です」   「あ、こ……今晩和。佐野と言います」   思わず間抜けな初対面の挨拶をする俺に、海斗が笑いながら肩を叩いてくる。
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